うさぎ式読書日記250205

井の頭公園の池

毎年この時期はいろいろと考えちゃうわね、とか思いながら1月を過ごした。
鬱と言うにはいつもの感覚すぎるのでなんと言っていいかわからないけれど、とにかくひどく落ち込んだまま年明けの時期をずっと過ごしてきたような気がする。
毎日寝る時に白い壁の方を向いて悲しいと思い、明け方には必ず悪い夢を見た。そこには知っている人が順番に登場した。

この時期には決まって訪ねるところがあって、今年も仕事を休んで行ってきたのだけど、同じだったのはとてもいい空だったということで、だけどもその時の心境は、ここ4年とちょっと感じが違っていた。
これまでは、自分はこれからうまくいくんだろうかとか、なんとか心が落ち着いていくんだろうかとか、そんなことを語りかけるように自問していた。
でもなんか今年は、執着というか希望というかそんなものが突然浮かばなくなって、あ、今の自分にはなにもないかも、って思って、これまではこうだったとか、これからはどうしようとか思ってたけど、そんなものがもしかしたらなにもないような場所に立っているのかもしれない、ってその時思って、少し呆然としたんだった。
次の日の朝に井の頭公園でベンチに座って、駅前で買ったおにぎりを食べながら池を見ている時にも同じことを考えていた。
セントラル・パークの鴨は一体どこへ行ったのかわからなかったけれど、ここの鴨はどれも大きくてのんびりと水面に佇んでいるように見えたのだった。

その日は帰りまでに時間があったので、旧尾崎テオドラ邸でやっていた「田島列島はイイもの展」に行ってきた。
テオドラ邸も瀟洒でいい雰囲気だったのだけど、田島列島の直筆原稿はやっぱりとてもイイものだった。
全ての単行本の原画が大量に展示してあって、なんと「子供はわかってあげない」の「イイものだと……思います」のシーンや、「水は海に向かって流れる」の「最高の 人生にしようぜ」のシーンとかの原画まで見られてしまうというんだからすごい。
ちょうど「みちかとまり」の3巻を読んだあとで、2巻の終わりからしたらいい感じの学校生活が始まるのかなと思った瞬間の大惨劇だったという衝撃が全く冷めやらない中だったのだけど、一室を使って展開されていたその展示もすごくよかった。
よく考えてみれば、グロテスクさとかわいさや面白さのギリギリのところに立っている、という意味では「ドロヘドロ」みたいでもあるな、とか思ったりしつつも、読み手の感情を揺さぶるようなものが、部屋の中に満ちているような気になったりしたのだった。
帰る前に物販に寄って、田島作品の名台詞(さっきのとか)をシールにしたものがあったので買った。

昨日は去年送ってもらった(恵贈していただいた)小説の同人誌の合評会があったので、久しぶりに谷町まで出かけていった。
ほとんどがあまり面識のない人の中で自分の感想を話すというのはかなり緊張することで、でもできるだけ自信を持って言おうと思って頑張った。
載っているどの作品も面白くて、合評も友好的ながらも様々な点から作品のことを考えていくような楽しいもので、気がつくと4時間くらい経っていた。
二次会で近くの中華料理店に行き、斜向かいに座った人が「マーダーミステリーというのが好きなんです」という話をして、そのことを興味深く聞いていた。
一定の人数が集まってみんなでするゲームなのだけど、参加者全員にそれぞれの配役が与えられ、その人物を演じながら一つの殺人事件の謎を解いていく、というのがマーダーミステリーらしく、テーブルトークや人狼とは違うんですか? みたいな話をずっと聞く。
そのあと二次会の人ほとんど全員で三次会でオーセンティックバーに行き、バーボンのロックを舐めながら、小説の同人誌界隈の話を聞く。
現代詩に関しては、参加している現代詩同人の例会で色々と話を聞くことはあるのだけど、小説を書いている人たちとはほとんど交わりもなく、なんかすごく興味深かった。
それで、その時に横に座っていたその日に合評会をした同人誌のメンバーのSさんから、同人に入らないかと誘われた。
昔、この同人誌にゲストとして呼んでもらって、詩を1編寄稿したことがあったんだけど、その時の合評会ではみんなの反応が「はあ?」みたいな雰囲気だったことを思い出したりしながら、でもその頃とはちょっと心境が違うような気もしていた。
落ち込みながらも今年をどうしようかとずっと考えていたんだけど、昨年の年末あたりから、ちょっと怖くても新しい環境に身を投じてみよう、それで合わなかったらまた違うことを試せばいい、とかっていう前向きな気持ちもなぜか出てくるようになっていて、前向きに検討してみます、と妙な言い方をしたりしたのだった。

I was thinking about the lagoon in Central Park, down near Central Park South. I was wondering if it would be frozen over when I got home, and if it was, where did the ducks go.
(The Catcher in the Rye, J.D.Salinger)

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