
29日に前日突然誘われて予定もないし(断りきれなかったのもあり)同僚2人と白浜付近に行った。
道の駅でマグロの解体ショーを見てから刺身を食べたり、白良浜に行って海風を浴びたりした。
それから千畳敷という波が海岸線の砂岩を侵食して広い石畳になったりしているところを見に行って、そのあと三段壁というその付近にある場所に行って、断崖になっていたり断崖の下にある洞窟を見たりした。
どこも雲ひとつない空と相まって絶景にふさわしい風景で、意味もなくみんなで写真をたくさん撮った。
なんかとても古い土産物屋があって石や流木を売っていたり、恋人たちの聖地という看板があったりとなかなか興味深いことも多かったんだけど、そのひとつが、よく見るといのちの電話の看板が何箇所かにひっそりと立てられているということだった。
あまりに気持ちのいい景色からはかけ離れたような感じでしかなかったんだけど、この場所は1年に20人くらいが命を落としているという場所でもあるらしかった。いつも利用している地元の駅や踏切や、まあ自分の職場もそうだけども、どこでも常に生と死が交叉していて、自分から遠ざかったように思っているとこうやって目の前にそれがあったりする。
行きの途中からと帰りは自分が同僚の車を運転したんだけど、家の近くの走り慣れた道路でスピード違反で警察に捕まってしまった。
昨日の3日は地元で長年やっているジャズフェスティバルがあって、そこに行こうと元同僚の67歳のTさんと、もう1人の元同僚Iさんとに誘われて行った。
これはなにか毎年恒例のようになってしまっている、この時期が来るだけで暗い気持ちになるような日だった。
ジャズフェスなのだから、いろんな会場の演奏を聞いて周るようなことをするのかと思いきや、この人たちとだとそうはならなくて、今年も想像していた以上にひどかった。
今回も同じような流れで、まず待ち合わせをしたら酒屋に行ってビールをたくさん買い込み、いつもの中学校のグラウンドの会場のステージも見えないような場所で2時間半くらいダラダラと飲む。
そのあと移動しようかと言って、今度は駅前の立ち飲み屋に入って5時間くらい同じ場所でダラダラと飲み続けた。
話はいつも聞いたような繰り言じみた話を延々として、いつもの「おでん屋に入って最初に三品たのむとしたらどの具にする?」という話までやっぱり出たりした。
途中で、無料でなんて滅多にお目にかかれないアーティストの出番が近いので、そろそろ行きましょうか、と言うも、「もう1杯、もう1杯だけ」と言って全くそこから動く気配がなくて、最後は1人がトイレに行った隙に無理やり会計をして、夕方になってやっとその場を離れることができた。
別に2人ともジャズを聞きたいわけじゃなくて、誰かと延々と飲んでいたいという口実でしかなくて、酒があまり飲めないしちゃんと演奏を聞きたいと思っている自分にとってはかなり耐え難い時間だったりはするんだけど、なぜか毎年この日をとても楽しみにしているらしいので、絶対にこういうことになるのがわかっているのに仕方なく毎年行っているんだった。
この時点でもう、2人とも呂律が回っていなくて、若干ふらふらと歩いていた。
そのまま少し離れた小学校のグラウンドにあるメインステージに行って、見たかったアーティストの次の次くらいのステージを見ていた。
Iさんはタバコでも吸いに行ったのかどこかに行ってしまっていて、すぐ前に立っていたTさんは音楽に合わせて体を揺らしているように見えた。そうしたら突然、Tさんの全身がガクガクと震えてきた。慌てて背中から支えて、大丈夫ですか、と言って見るとTさんは顔面蒼白で唇が白く、明らかに危ない様子だった。
両脇を抱えて急いで人混みの中から引きずり出して、とりあえず座らせたりしていると、スタッフがすぐに察知して来てくれた。もらった水をちょっと口に含むとそのあとすぐに吐いてしまった。
明らかな急性アルコール中毒で、スタッフの人も「救急車呼びますか?」と言って数人が動き始めようとしていた。それでも、本人は吐いてちょっと落ち着いたのか、「いらんいらん」と言って、そのあと自分に「オレはいったいどうなってたんや?」と聞くのだった。
それから一旦救護所に連れて行かれて、椅子に座っているうちにかなり落ち着いてきたようだった。
そうしているうちに、事情と今いる場所を伝えていたIさんも救護所にやってきた。
「だいぶん落ち着いたわ」とTさんが言うと、Iさんは「ほな店行きましょうか」と言った。
Iさんはなぜか夜の8時に駅前の居酒屋を予約していたらしく、「酔ってるときにはなにか腹に入れたほうがいいですよ」と言って、連れて行こうとした。
さっき電話で倒れて吐いたって言ったのに関わらず、急性アルコール中毒で危ない状態だった人間をもう一度居酒屋に誘うとかちょっといかれてるな、と思ったけれど、Iさんもすでにあんまり舌が回っていなかったから、そりゃあまともじゃないか、と思った。
こんな状態で絶対に駄目です、と何回も言って、帰ることにした。
Tさんが倒れなかったら1日中飲み屋の中にいることになったのかと思うと目眩がしそうだった。
Iさんは不満そうな顔をしながら帰っていき、Tさんはちょっと怖いので途中まで送っていくことにした。案の定、梅田に着くまでに途中の駅で駄目そうだと言ってトイレで吐いていて、そのあとはかなり落ち着いた感じで、大阪駅で電車に乗るところを見届けて別れた。
それで、そんなここ一週間で思っていることのひとつは、嫌なことをなんか別の形で消化できるようになってきてるな、ってことだ。
警察に捕まったり、自分の望まない1日を過ごしたり、あとはこの前の胃カメラとかもそうだけど、嫌なことを、なにか興味深い経験ができてよかったということにすり替えて考えることができるようになってきてて、まあこれは前向きな進歩なのかもしれない。
もうひとつは、誕生日の前後というのはこれまでの50年の人生を振り返っても、大抵がかなり悪い時期だったっていうことだ。
だから、ちょっと前の凪いだ感じの日々が嘘のように総じて落ち込むことばかりが起こるようになってきたのだけど、この時期だからしょうがないな、って思っている。なにがしょうがないのかわかんないけども。
それと、やさしくされたいな、って思ってる。
「自分が運転するからいいよ」とか言ったり、意に沿わないところに出かけていって他人を介抱したりとか、まあもう少し広げて自分のこれまでの人生みたいな話でもいいんだけど、本当はもう、あんまり人にやさしくしたくなんかなくて、誰かにやさしくされたいって思う。
まあさ、そんなことは不遜なうえにこれからもほとんど起こり得ないことだってくらいはわかってるんだけど、それでも今はずっとそんなことを考えてるんですよね。